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小学生の青い春③ 完結編

邑楽戦敗北から一週間後-。
練習を再開した我らがハヤブサイレブン。
敗戦のショックは引きずっていたが、新たな目標に向けて
走り出しました。
そんな時、先生からFC.邑楽が優勝したことを知らされました。
決勝はPK戦での薄氷の勝利だったと。
-PKか。相手チーム頑張ったな。邑楽相手にPKにまで持ち込むとは・・・。
誰かが先生に聞いた。
『相手、何ていうチームですか?』
『高田SSS(スリーエス)』
高田SSSか・・・。

2ヶ月後、この高田が我々の前に立ちはだかろうとは
この時の我々にはまだ知る由もない-。

次の我々の目標が決まった。
8月に行われる
『スポーツ少年団 群馬県大会』。
ここで優勝すること。
新たな目標ができ、練習にも力が入る。
スポ少で優勝するためには、全日本県大会と同じく、
まず北毛地区予選を勝ち抜き、各地区代表で組まれた
トーナメントを5回勝たなくてはならない。
厳しい戦いだが考えてる暇などない。
7月からは毎週予選がある。
残された時間は少ない。
今度こそ、今度こそ・・・。

地区予選が始まった。
12対0、8対0など圧倒的な強さで我々は勝ち上がっていった。
もっともハヤブサは創設以来、地区予選で敗退したことは、ない。
北毛1位突破はこの頃のハヤブサにとっては常識だった。

予選を突破し、県大会に入った。
一回戦を3対0、2回戦を4対0、3回戦・・と勝ち進み、
準決勝に駒を進めた。
この準決勝。
ハヤブサにとって、そして私にとって最も思い出深い、
ドラマティックな試合となる-。

準決勝、太田城西戦。
この試合はもつれにもつれた。
点を取っては取られ・・・と嫌な展開になった。
私自身、判断ミスで点を取られたりもした。
延長戦まで試合は続き、決着つかずPK戦となった。
我々にとって公式戦初のPK戦だ。
だが、大会前にはPK戦を想定しての練習もしてきていたので
不安はない。
が、皆PK戦となったことで緊張している。
それはそうだろう。
自分が外せばチーム全体が一気に負けに傾くのだ。
しかし、逆に言えば私が相手を止めればいいのだ。
だが、PKは圧倒的にキッカーが有利。
私も責任を感じていた。

PK戦は各チームから選出した5人が交互に蹴り、
ゴールした数の多い方が勝者となる。
5人終了時にゴール数が同点の場合は、どちらかが外すまで
続けるサドンデスとなる。

我々は後攻となった。
私がゴール前に立つ。
相手キッカーも緊張している様子だ。
相手が助走に入る。
蹴った。
私は止めることができず、ゴールを奪われる。
次は私たちの番だ。
1人目は6年のカズ。
度胸満天のあいつなら絶対決めるだろう。
私はペナルティエリアの外で見守る。
カズ・・・決めた!
1対1。

2人目。
相手シュートはポストに当たり、外す。
こちらの2人目は6年のヨシ(アンビリーバボー編に登場)。
チーム1のテクニシャン。
ヨシ・・・決めた!
2対1。私たちのリード。
3人目はお互い決める。3対2。
そして・・・
PK戦はここから大きく動き出す。

4人目。
相手は決める。3対3。

後攻のハヤブサの4人目。
ここで入れれば決勝進出に大きく前進する。
キッカーはキャプテンのトシ。
チームをここまで引っ張ってき大黒柱だ。
トシなら100%決めるだろう。
誰もがそう信じて疑わなかった。
が・・・

トシは外した。
蹴ったボールは無情にもキーパー正面へ。
ビデオに映っているが、頭を抱え崩れ落ちるトシ。
その場にうずくまり、暫らく動けなかった。
厳密に言えば、4人終了時で3対3の同点だ。
まだ負けたわけじゃない。
しかし、ゲームを知っているトシのこと。
責任を大きく感じてしまったのだろう。
どうにか立ち上がり、泣きながら皆の座るセンターサークルへ歩き出す。

そんな時だった。カズがおもむろに立ち上がり、泣きながら帰ってくる
トシに向かって大声で叫んだ。

『キーパーを信じろーーっ!!』

次キーパーが止めるから大丈夫だ!とカズは言ってくれたのだ。
今から思えばドラマみたいな、ちょっとくさい展開だ。
だが、我々からすれば本当にこの試合に賭けていた。
絶対負けるわけにいかなかった。
カズも感極まったのだろう。

カズの叫び声を聞き、私は燃えた。
言ってくれるじゃねえか、カズ。
興奮した。
これ以上ないくらい集中してゴールに向かった。
そしてチームの為に、何といってもここまでチームを引っ張ってきた
トシの為にもここは絶対止めなければと思った。

見てろ・・・絶対止めてやる・・・・。

私は構えた。
相手もこの場面で外すわけにはいかない。
5人目のキッカーは大きく助走をとった。
それをみた時、
-こいつ、思いっきり振りぬいてくるな・・
と思った。
この大事な場面で技に走ってミスしたら後悔するもんな・・・と私は読んだ。
多分、私から見て右サイドに蹴ってくる。
ヤマを張った。
外れても左サイドは私は飛びやすい。どうにかなる。
相手は走り始めた。
蹴った!
右だ!私は思い切り跳んだ。

ボールは私の右手に当たり、ゴールを外れていった。
今でもはっきり覚えているが、この時およそ現実とは思えない感覚を
味わった。
大歓声が沸いている。

止めた。

我にかえって周りを見渡すと
チームのみんな、先生・保護者・両親、
皆立ち上がって手を叩き歓喜している。
そんなみんなに向かって、私は右手を突き上げた。

-へへっ、どうだ!止めたぜ!

そんな感じだった。
ドラマティックな展開に金島軍団は親も選手も大騒ぎだった。

5人目キッカーは5年のユキ。
こいつが決めればハヤブサの勝利だ。
私は静かに見守った。

ユキは・・・決めた!

ユキが決めた瞬間、私はみんなの方へ走りだした。
みんなも叫びながら私の方に走ってきた。
みんなでぶつかるように抱き合った。
その中にトシもいた。
トシも笑っていた。

試合を終えた私たちは礼をし、ベンチに向かった。
大歓声で迎えられた。
私も皆に頭を叩かれまくれ、もみくちゃにされた。
嬉しい瞬間だった。
保護者の一人が
『いやぁ、よく止めた!カズがあんなこと言って止めなかったら
どうしようかと思ったぞ!』
みんな大笑いだった。

一段落し、先生からの話を聞く。
決勝に上がった我々を待っていたのはやはり、高田SSSだった。
-やっぱり高田か・・・。
昼食を挟み、ダブルヘッダーとなる高田との決勝戦に挑む。

昼食後、一人ボーッとしていると、誰かが近寄ってきた。
見るとトシのお父さんだった。
私は立ち上がるとトシのお父さんは
『あっ、いいよ。そのままで。佐藤君に一言云いたくて。』
「はい」
『さっきはありがとう。本当によく止めてくれた。
もし佐藤君が止めてくれずチームが負けたらあいつは
一生後悔するところでした。本当にありがとう』
そう言うと、トシのお父さんは去っていった。
嬉しい言葉だった。

決勝ー。
対高田。
高田は新チームになって以来、邑楽以外に負けていない。
しかも敗戦はPK戦だから今まで力負けはない、と言ってもよかった。
この大会も一回戦、10対0、二回戦4対0・・・と圧倒的な強さで
勝ち上がってきた。
しかし、私たちも負けるわけにはいかない。
この日の為に苦しい練習に耐えてきたのだ。
必ず勝つ!
我々はPK戦を勝利し、勢いがあった。
みんな獲る気満々だった。
いよいよ決勝が始まる。

決勝が始まった。
高田はスピードに定評がある。
開始早々、そのスピードを生かし仕掛けてきた。
だがディフェンスが高田の動きを抑える。
ボールを奪い返し、すぐさまカウンター攻撃。
出だしは一進一退。
だが徐々に我々が押し始める。
前半10分、カズのセンタリングをゲンが決めた!
1対0。
我々は先制した。
その後も攻撃の手を緩めないハヤブサ。
しかし高田も追加点は許さないと必死に守る。
前半を1対0で終えた。

後半。
我々は攻めに攻めた。
後半開始早々、追加点を奪う。
高田は初の展開に戸惑いを隠せない。
我々は相手の気持ちを知っている。
2ヶ月前、邑楽戦での事を思い出した。
相手はガックリきている。
勝負はここだ。
もう1点取れば戦意を喪失し試合は決まる。
邑楽戦での敗戦を生かし、私たちは無我夢中に攻め続けた。
試合終了の笛がなった。
後半終了直前にも点を奪った我々は3対0で勝利した。
優勝だ!
初優勝に喜びを隠せなかった。
この時、私はこの仲間達と一緒で本当に良かったと、心の底から思った。

その後、私は選抜に選ばれ、選抜メンバーとして数試合こなし、
金島ハヤブサとしてはGTV杯、京北大会を経て、
金島ハヤブサイレブンの活動を終えた。

中学でもサッカーをやろうと思ったが、生意気にもプロがないスポーツは
どうなんだ?という事で迷う内、春休みにやっていた
キャプテンのアニメを観て、中学では
野球をすることになる-。

サッカーに賭けた青春の終わり方としてはいかがなもんか・・・。
                                        おわり

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