2008 夏季昇段昇級審査会 -黒帯誕生-
6月15日、夏季昇段昇級審査会が行いました。
今回は通常より若干人数が少なかったのですが、
発足4年目にして初となる一般の昇段挑戦が行われました。
挑戦者は太田I・S君。
彼の昇段挑戦までを書き記したいと思います。
I君と私の出会いは誠真会発足前、私が指導していた道場でした。
私といつも一緒に稽古していたS・Hさんの紹介で入門してきたのが
I君でした。
Sさんは整骨・整体等の仕事をしているのですがそのSさん曰く、
『自分が今まで見てきた人間の中で体が1番硬い』
とのことでした(笑)。
入門当初のI君はそんな印象を壊さない、見事な強度を保っていました。
その強度は悪魔将軍並みだと思います。
何しろ準備運動で前屈をしようと足を前に揃えると後ろに倒れてしまったり、
中段を蹴ろうとしてひっくり返ったりしたことがあったものです。
(自分の限界を超えた高さを蹴ろうとすると安定がなくなり
転倒しそうになるあれです)
あの時は未来永劫I君が上段を蹴れることはないだろうと思ったものです。
そんなI君でしたが、生来の真面目な性格もあって着実に力を付けていき、
関東錬成大会初級重量級でベスト8に入るなど、
実績も残すようになってきました。
元々野球を初め、スキーやボード、ゴルフなど実は何でも出来る
I君ですから当然と言えば当然かも知れません。
そんな中、私の独立・誠真会発足に伴い、来てくれたのが先程前述した
Sさんであり、I君でした。
その後しばらくして、Sさん他何人かが仕事柄稽古に来れない日々が続き、
太田は私とI君の2人での稽古が多くなりました。
当時I君は黄帯だったでしょうか。稽古後2人でI君の昇段は何年先かを
計算してみました。
順当にいって約2年半先と出ました。
『道のりは長いな~。下手したら3~4年かかりますね。』
とI君が言っていたのを昨日のことのように思い出します・・・。
2人だけでの稽古が続いていました。
2人だけで寂しさもあるが、この今の状態を逆手にとってI君専用の・
I君の持つ体の特徴を生かし・欠点を是正する稽古をすることにしました。
私はI君と話し合い、I君の希望もあって、
上段回し蹴りを蹴れるようになる稽古を課すことにしました。
I君は
『蹴れるようになるのでしょうか?』
と不安もあったようですが、私は体の使い方を変えれば蹴れるという
確信があったのでI君に言いました。
『まずは言われたとおりに稽古してくれ。一切疑問を持たないで
やってみて。疑問を持つと自己流に走るから。I君が上段蹴れるように
なったら他の人は年齢・体の言い訳出来なくなるぞ。行く末指導する時が
来た時も自分の体を通して言えるので説得力も出てくるし。』
それからというもの上段の為のメニューを作り、稽古する日々が続きました。
ここで上段の為、と言いましたが私の考え方はどんな動きも体の使い方は
一緒だと思っているので、特別変わったことはしていません。
ここでは何をやらせたかはあえて書きませんが・・・。
そして3ヶ月が過ぎた頃には見事上段を蹴れるようになっていました。
言われた事をとにかく全うしようとする彼の性格が自身を変えて
いったのでしょう。
その後もしばらくマンツーマンでの稽古が続いていきました。
その頃のI君からの年賀状には毎年、
『一般部が増えることを祈ってます』
と付け加えてありました(笑)。
I君の願いが通じてか、NさんやHさん方が
稽古に参加してくれるようになり、
2人だけの稽古の日々は幕を閉じました。
TやA同様、I君とは苦楽を共にしてきました。今振り返って考えると、
よくぞ一人で頑張ってくれたと心から感謝しています。
I君は大会やその場限りの強さを追う、という姿勢で
稽古をしているのではなく、
これから先、年齢を重ねても動ける体作り・体の使い方を学ぶという
考えだったので、地道にしかし着実に体を変化させていくことが
出来たのだと思います。
審査では一般部初の昇段審査ということで、本人も相当緊張していたと
思います。
審査前の最終稽古では今までにない緊張感が彼を支配していました。
動きがカチカチに硬く、心配になったほどです。
審査前に私が、私とI君が大変お世話になっているH接骨院のH院長先生に
治療してもらった時も、H院長先生が
『昨日S介が来ましたが、顔が真っ青でしたよ。』
とおっしゃっていたので、審査前に倒れやしないかと不安になりました。
当日まで体調を崩さないよう忠告し、いよいよ審査当日を迎えました。
ただI君には稽古の時から、今回の昇段は厳しいぞと話をしておきました。
なぜなら今回の昇段は過去2回とは違い、夏にやるということ。
体力の消耗度が激しいことは想像出来たので、暑さに負けない
集中力の維持が審査の合否を決める要因になると思っていました。
気を抜いたら型で潰れる可能性が高いな、と。
しかし、そんな心配をよそに審査では良い意味で開き直ったのか、
堅実な動きを見せてくれました。
懸念だった型も突破し、いよいよ10人組手となった時、
私も一人更衣室で道着に着替えながら
『I君もとうとうここまで来たんだなぁ・・・』
と感慨深くなったものです。
10人組手開始前、私はI君に
『ここまできて受けを意識しすぎるなよ。最後まで手を出して攻め続けろ。』
と話しました。
I君も黙って頷いていました。
10人組手は技よりも心、魂でやり切るものだと思いますし、
こちらも計算など無い、必死の姿を最後に見せてもらいたい。
今までの空手人生の中で、1番苦しい出来事が昇段審査であり
10人組手だったと言えるような、そんな力の限りを尽くした体験を
是非してもらいたいのです。
彼は実直な男であり、やれと言ったら必ずやる男です。
肉体改造の為、歩けと言われれば毎日歩き、
肉を断て、と言われれば口に入れず、こうだと教えれば
その通りやる、そういう男です。
彼の10人組手はどうだったか?
彼は最後の最後まで攻撃し続けました。肉体改造してきたとはいえ、
彼の骨格・筋肉はまだまだダメージを分散しにくい体にもかかわらず、
抵抗し続けました。
意識が薄らぐ中でも言われたことをやり通そうとする
必死な姿がそこにはありました。
何故、私がそう言えるか。
それは私のよく知っている普段の彼の組手スタイルとは全く違うからです。
I君を叩きながら、I君を蹴りながら彼の想いを強く感じることが出来ました。
10人組手完遂ー。
ここに誠真会4人目となる黒帯が誕生しました。
共に歩んできた5年1ヶ月。
決して楽な道のりではなかったと思います。
お互い色々な事があった5年間でした。
苦楽を共にした5年間、
それは私達の関係を揺るぎないものへと固めた時間でもありました。
審査終了後、更衣室でI君と二人きりになった時、
I君はボソッと私に言いました。
『今日から本当の空手道が始まるんですよね。』と。
『そうだ。』
と私も答えました。
私達は同じ方向を向いている。
そう改めて感じた瞬間でした。
私もI君も歩くことはやめない。
私達はこれからも共に歩き続ける。
ゴールはないが、それでも共に歩き続ける。
I君、昇段おめでとう!押忍!!
コメント
押忍
一般部初の審査。基本から最後の連続組み手まで、しっかりと、目の前にある空手の門への集大成を拝見させて頂きました。館長と共に苦楽を共にし、まさしく誠真空手の厳しさ、奥深さを感じた所存です。
立ち方3年、握り方3年、蹴り方3年 以上で空手の門に辿り着くと話を聞いた事があります。合わせて誠真会は人間性の成長も重んじた空手道であり、今回、門を開く事を許されたIさんに対し尊敬の念を抱くと同時に目標として、修行していきたいと感じました。改めまして、Iさんおめでとうございました。またお手本を見せて頂きありがとうございました。押忍
Posted by: 一般道場生 | 2008年07月24日 05:20